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Sep 28, 2004

MP3を説明することの難しさ、用語の必要性

 今日は岡田有花記者の打って変わって真面目な記事があった。

 「iPodってMP3じゃないの?」――最近、2人の友人から同じ質問をされ、答えに困った。弊誌の読者なら質問の意味すら理解しかねるだろう。2人はどうやら、「シリコンオーディオ」という「デバイス」を「MP3」という「ファイル形式」と同じだと思っているらしかった。(ITmediaニュース:「iPodってMP3じゃないの?」と聞かれて困った)より引用

 ほんと、私の元にもこの手の質問は良く飛び込んできます。

 そしていつも困る。MP3というファイル形式をどこまで説明すれば良いのか?果たして、最近のHDD/ソリッドオーディオプレイヤー(いわゆるMP3プレイヤー)とMP3の関係などをどう説明すれば良いのか……。

 MP3が音楽プレイヤーをさす言葉。と言う今回取り上げられた間違った認識以前に、未だに多くの人は「携帯型プレイヤー=ウォークマン(!!)」だと思っている人も多い。

 でも私は、「PanasonicのMDウォークマン買ったんだ~。」と言う爆弾発言を受けても何も言わないのは優しさだと思っています……(いや、まぁ、ただ面倒なんだけど)。

 と言うか、ユーザが商品を利用する際に、本来は内部技術などどうでも良いのだ。むしろ、面倒な技術は隠蔽して、代わりに便利な言葉をあてるのが商品開発の一般的な手法です。

 例えばMDを例に取ってみると。

 MDと言う言葉は用語。MiniDiskと言う分りやすい名前を与えられた何か。MDが差す意味は幅広く、MiniDiskを利用する全ての環境をMDと言い切ってしまうことが出来る。

 また、そのMDにはロングプレイモード(LP)があって、LP2とかLP4として、ビデオ機の3倍モードと同じ感覚で使われているが、ユーザにとって重要なのは「LPモードは長く録音できるモード。」と言う認識だけあれば問題ない筈。したがって、

 MDのLP2はATRAC3の132kbpsだよな。

 と言うマニアな認識までは必要ない。

 この辺りSONYのMD立ち上げは上手かったと思う。LPモードと言う用語は知っているべきだけど、132kbps、ビットレートなんて言葉はMDを利用する上では知る必要なんて無い、と言うのが味噌。

 それと同じように、携帯型のプレイヤーをウォークマンと言うのにはやや認識が不足しているとは思うが、特に実際の利用に問題は無いと思う。

 逆に考えればウォークマンと言う言葉も、「『SONYの』携帯型のプレイヤー」の総称でしかないわけで、『SONYの』と言う認識は欠けていても実用には問題ないよね。(あ、いや、SONY信者さんを敵に回してるわけではないですよ。あくまでも一般論です 汗)

 だから、多くを説明しなくてもMD等は、

 「MDっていうカセットを使ったプレイヤーがMDプレイヤーなんだ。録音にはMDコンポとかが必要だね。長く録音するときはLPモード使うといいよ。」

 と言う、SONYが作った便利な用語オンパレードで、技術の核心に触れることなく説明できた。用語って難しいと思われても、この用語一つ一つがそれなりに説明可能だから何とかなっていた。

 でも、困ったのが「MP3」と言う言葉の取り扱いに付いて。だ。

 MP3はファイルフォーマットであり、今までの呼称問題とは次元が違う。

 そして、MP3と言う存在自体、そもそも中途半端で、他に優良な音楽圧縮フォーマットが無かった時代、Napsterを初めとするファイル交換が主導となって広まり、いつの間にか一般的になった形式だから今利用されているに過ぎない。

 つまり、MP3にはMDにおけるSONYの様なパートナーは事実上存在しておらず、先ほどのMDにおけるLPとかMDとか言う便利な用語は用意されていないのが……。

 ここが非常に問題。

 そして、MP3フォーマットは、デスクトップパソコンで再生も出来るし携帯型プレイヤーでも再生できる。目覚まし時計にだって再生機能の付きは実在するし、携帯電話だって再生可能(VodafoneのSHシリーズ等)。

 こんなに用法があるのに、グローバルに使える用語も無くどう説明すりゃいいの?と言うことになってしまう。多くの人に「ファイル」と言う概念の理解を求めるのはちょっとまだ酷だと思う。

 気が付けばMP3プレイヤーなんて言う言葉がデファクトで使われるようになってしまい、混乱を招いている。

 もっとマシな言葉は無かったのかと、MP3プレイヤーと言う言葉を使い続けた小売業者、製造メーカーに問いたい。今改めてこういう記事を書いて見ると腹立たしいね。MP3以外のフォーマットも存在する以上、気を使うべきだった。

 けれど、腹立たしいからとMP3プレイヤーという言葉を使わずにHDD/ソリッドオーディオプレイヤーの説明をした場合。例えばこれを、

 「HDD/ソリッドオーディオプレイヤーはMDと同じような物だよ。MP3っていう音楽ファイルを再生するんだ。」

 などと事実を大きく曲げ、大幅に譲って説明するどうなるだろうか。

 「え?MP3ってカセット?

 こう帰ってきても当然だから説明する側として泣ける。

 そもそも「MP3プレイヤー」以外に「HDD/ソリッドオーディオプレイヤー」を置き換える単語が無いのもつらい。

 例えば「MP3」と言う単語も「ファイル」と言う単語も使わず、「データ」と言う、結構世の中に広まってる単語を用語として使ったらどうだろうか。そう、「オーディオデータプレイヤー」とか。もっと縮めて「データプレイヤー」ではダメだったのか。

 具体的に、「データ」「データプレイヤー」と言う新用語を使ってHDD/シリコンオーディオプレイヤーとMP3の関係を説明してみる。

 「データプレイヤーはMP3っていうデータを再生するプレイヤーなんだ。カセットは内蔵されてて、一般的なプレイヤーよりも録音時間は長いの。付属するコードをパソコンに繋いで、パソコンの中にあるMP3ってデータを録音してやればいいんだよ。」

 で済む。多少の嘘(HDDの存在を内臓カセット、とか、MP3転送を録音とした)はあるが実用上ではこれで問題ないと思われる。

 わーお いままでの くろうは なんだったのですか せんせい

 と、ミシシッピー調に叫びたくなると言う物だ。

 でも現状はそんな言葉は使われていない。では、MP3と言う言葉がプレイヤーを差すと認識しているユーザに、一体どうやってHDD/ソリッドオーディオプレイヤー。を説明するか……。悩むところだ。

 岡田記者も相当迷った挙句こう切り替えしている。

 考えた末ひねり出した解説は、お粗末だった。「あなたが『MP3』と言っているのは、MP3という形式の音楽ファイルを再生するプレーヤー。MP3は音楽ファイル形式として、今一番普及している。iPodもMP3プレーヤーの一つなんだけど、一般的なプレーヤーよりも容量が大きくて、曲をたくさん保存できる」――少々不正確だが、これ以上正しく・詳しく説明すると余計混乱する気がして諦めた。2人は「なんとなく分かった」と言ってくれた。(ITmediaニュース:「iPodってMP3じゃないの?」と聞かれて困った)より引用

 岡田記者は結局「音楽ファイル」「MP3プレイヤー」と言う言葉を用いることでMP3が何なのか。と言う事をさりげなく匂わせつつ、一般的なプレイヤーとの違いをアピールしている。でも、ひいき目に見て70点、と言った所か。

 もちろん、MP3以外を再生できる事実は利用者は知らなきゃならないし、MP3ファイルがどういうものであるのかの説明は特に無い。まぁ、これを語る用語が無いから辛いんだけど。

 単に「音楽ファイル」と言う説明では、パソコンが使えるユーザはともかく、一般のiPodに興味津々な方々を納得させることは困難。

 結論を書くと、MP3を説明するのはやっぱり難しい

 今思うのが、SONYが進めてきた今までの隠蔽・独自フォーマット戦略は、ユーザの利便を高めると言う意味では非常に良い物だったと思う。(残念ながら今回のニュースで、ついにSONYはHDD/ソリッドオーディオプレイヤーにおいては、この戦略を断念した。)

 惜しむならば、ここまで世界的に広まったMP3/WMA/AAC/ATRAC3の各音楽圧縮フォーマットのスタンダードが無いことだ。MDはATARACとATARAC3と言うスタンダードが存在するが、HDD/ソリッドオーディオプレイヤーの世界にはMP3以外にスタンダードは存在しない。

 これから、MP3も音質や5.1ch対応化、著作権管理問題で限界を向かえ、WMA/AAC、または新しいフォーマットが取って代わると思うのだが、それでも「MP3プレイヤー」と言う言葉を使い続けるのだろうか。

 その中で、SONYの様なパートナー、リーダーシップを取る企業は、やっぱりユーザーにとっては必要であると今感じている。

 岡田記者は最後にこうまとめている。

 何も考えずに音楽を録音・再生できるデジタルオーディオ機器は、もう現れないのだろうか。音楽プレーヤーが、ファイル形式など意識したくない“普通の人”にも使いやすくなる日は来るのだろうか――そんなことを考えながら、彼らにシリコン/HDDオーディオをどう解説すれば分かってもらえるか、まだ悩んでいる。(ITmediaニュース:「iPodってMP3じゃないの?」と聞かれて困った)より引用

 もう立派なIT戦士だねぇ。

 私も全く同じように思う。やはり、ユーザーの全てが情報処理に付いての専門家ではないし、せめてHDD/ソリッドプレイヤーはパソコンから出来るだけ切り離して、多くの人がMD並に利用できるようにする事が、これから求められるだろう。

 音楽は、やはり気楽に音を聴くものだと思う。

#ITと言えば思い出す。本家ZDNetのアンカーデスク記者、David Courseyさん。彼の記事は岡田記者の言うところのIT戦士度の高い物で、早くからITに付いて論じておられたが。どこへ行かれたのだろう、最近見ない。彼ならこのMP3の説明をどうするのか興味深い。

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Comments

takerattaです、大変興味深く拝読しました。
MP3言われてみれば、一般化しているのに概念って
うまく説明しきれないですよね。
とてもためになりました。
HDDウォークマンがMP3対応ときたもんで、
とても勉強させて頂きました。

takerattaは未だATRAC3の呪縛から逃れられそうにないです。あぁ…。

Posted by: takeratta | Sep 28, 2004 at 14:43

こんばんは、コメントありがとうございます。

そうなんですよね。やっぱりコンピュータから派生する用語って難解で……。

HDDウォークマン、新型のNW-HD2が登場しましたが、こちらはNW-HD1の低価格化モデルとなって、MP3には対応しませんでしたね。何となく「在庫一層モデル」と言う意味合いもあるのかなと邪推しております。買うなら次期モデルですね。

ATRAC3は記録するアプリケーションに弱点があるかなとは思いますが、SONYの念願だった規格統一に至らなかったのが残念でした。MP3もいい加減限界が来ているので、もっと汎用的なスタンダードをいつか提唱してくれることを願っています。

Posted by: エヴラカ丸. | Sep 30, 2004 at 00:05

こんばんは。また伺いました。
確かにアプリ、問題ありだと思います。
takerattaはネットワークwalkmanから毒されたソニー狂ですが、苦笑、Sonicstage悪評高いですね。
確かに、価格.comなどではこき下ろされています。
ATRAC3圧縮でため込んだファイル、今更iPodに浮気できない状況になってきています。ただいま2000曲程度。涙。
MP3対応と聞き、NW-HD2の次、行ってみようー!って感じですなぁ。

Posted by: takeratta | Oct 05, 2004 at 01:03

ども、ふたたびのコメントありがとう御座います!

SonicStageは動作が怪しいですからね、やっぱりちょっと面倒くさいと言う思いも先行してしまいます。あのソフトの改善は急務だとは思いました。

私もWMAで録音した曲が同じ位あるので今更iPodには行けなかったりします……。暇な日を見つけてAACへの全曲エンコード。なんて考えたくも無いですし(笑

ど、どうせならNW-HD2の次!WMA/AACにも対応して次、行ってみよー!(泣)

Posted by: エヴラカ丸. | Oct 08, 2004 at 02:50

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