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Jun 02, 2004

P2Pと裁判と

 開発者、ではなく、その利用によって生まれた損害は、果たして認められるのだろうか。と言う注目の裁判が始まるようだ。

 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」が原因で、北海道警巡査の私物のパソコンから、逮捕された際の捜査資料をネット上に流出されたとして、江別市内の会社員少年(19)が1日、道に慰謝料200万円を求める訴訟を札幌地裁に起こした。

 訴えによると、少年は3月25日、同市内で道警江別署に道路交通法違反の現行犯で逮捕されたが、その後、同署の男性巡査が作成し、私物パソコンに保存していた捜査報告書などが、ウィニーを通じてインターネット上に流出。実名で交通違反の詳細な内容が不特定多数に閲覧され、精神的損害を受けた、としている。Yahoo!ニュース - 社会 - 読売新聞社

 ふむ。まず、Winnyで情報を流す道警勤務の警官が確実に悪い。

 しかし、この事件は立件が難しい。一体どの程度の人が閲覧したのかを立証する事が非常に難解な事もあるし、どの程度の人権侵害に当たるかが非常に判断し難い。また、法律で食ってる人たちの中に、ネットワーク分野を担当できるほどのレベルを持った人がまだまだ少ないのもキツイ。

 ここに、どうしても専門分野の知識が必要であるし、まだまだ判例の少ないジャンルの裁判であるために、例え過失があっても、認定され、この裁判で勝てるかどうかの保障が無い。(ファイル交換ソフトで生じた不利益の損害賠償裁判は、記事によると初なんだと言う。)

 また、この手の公務の不手際を問う裁判は、ずるずると長期化することは必死で、今のままのダラダラ長い裁判では、最高裁に行くまで状況が一変している可能性は否定できない。

 現状の裁判制度が、ここ10年で加速してきた情報にまつわる裁判に非常に向かない。と私は思う。この点を、どう改善していくのかは、今後の課題なんだが、改善する提案をすべきこの手に強い政治家が、若年層の投票が少ないため、選出されていないのが現状だ。世の中を変えたいなら、原則、まずは投票から。とは古臭いかな。

 そして、立件後、このファイルがP2Pノードの中から姿を消すかと言えばそういう訳ではなく、例えばこの裁判に関して言えば、今もネットワークに存在するWinnyノードの片隅には存在すると思う。これが第2の問題点であるのは言うまでも無い。

 ここで問題なのが、P2Pの性質である。例えばWinnyでは、一度流通させたファイルは、そのリクエストが多いほどに優先度が上がり、キャッシュとして他のノードの中で生き続ける。これが、もしも今回以上の重大な人権侵害、及び刑事事件に問われるべき危険な人気ファイルであれば、立件中もそのファイルはノードの中で生きている事になり、立件の妨げになる可能性がある。

 例えば女性のプライバシーに関わる問題であれば、果たしてこの女性は裁判を起こす事が出来るだろうか。立件中もそのファイルは多くの人の目に晒される事になり、この事が、例え被害があっても訴え出ることが出来ない2次の被害をもたらす危険性がある。

 「情報差し止め」が、事実上出来ないのだから当然と言えば当然である。

 私には言葉が足りないので、よく読ませて頂いている、Lucrezia Borgia の Room Cantarellaさんとこの、2004-05-27 で、このネタに触れておられるので読まれると良いと思う。

 また、裁判ではP2Pの最初の一人が誰なのかを特定する必要がある。今回の場合、出所がすぐに明らかになったのが迅速な裁判へと発展したが、実際、Winnyですらその暗号を解くのには時間がかかっている。これが、後発のShareやMUTEなどの新興P2Pソフトでは更に利用者の摘発が困難となる(だろう)。

p2psre
ファイル交換ソフト勢力図(簡易)

 こういう技術的な進化も、いたちごっこの中で生まれる物ではあるが、多種多様に成ればなるほど、被害者としてはどんどん不利になると言うのも見逃せない。

 結局、開発者も利用者も良識を求められる。だけの話なんだけど、現状、それが通るとも思えないし。

 今回は被害者から見る裁判と言う話に特化して書いてみましたが、ファイル交換をはじめ、情報と言う分野が、様々な既存の社会に歪みを生んでいるのは事実。負担も増えているし、これから、社会全体のこういった至らない点を調整すると共に、ある程度のルールの制定も待たれる。

 ……こういう仕事、増えないかな(終わりの見えない就活中)

#最近、ちと卒研が忙しくてこちらへの書き込みが減ってます、申し訳ない。何とか適当ではあるものの、更新回数を確保するための手段を練ってみたいと思います。cbさんみたく、pyaでも巡回するかな(汗)

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